このたび昭和館では、「手塚治虫の漫画の原点~戦争体験と描かれた戦争~」と題し、特別企画展を開催する運びとなりました。
「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「リボンの騎士」「火の鳥」など数々の作品を生み出し、戦後日本の子どもたちを熱中させた漫画家・手塚治虫。 昭和3年(1928)生まれの彼もまた、戦争体験者の一人でした。学徒動員として働きながら、死と隣り合わせの日々の中でも漫画への情熱を燃やし続け、終戦を知った時は漫画が自由に描ける時代が来た喜びを感じました。そして戦後、彼は自らが体験した戦争、そして平和への思いを、様々な漫画にメッセージとして込めてきました。
今回の展示では、手塚治虫の直筆原稿や本人の写真を中心に、当時の実物資料や写真なども展示いたします。
戦後60年を過ぎた現在、手塚治虫が生涯を通じて、子どもたち、大人たちに伝えたかったメッセージを知る機会にしていただくとともに、戦中・戦後という日本人が最も苦労した時代をふりかえります。
主催 | 昭和館 |
企画制作 | 株式会社 手塚プロダクション |
会期 | 平成19年3月14日(土)~5月6日(日) |
会場 | 昭和館3階特別企画展会場 |
手塚治虫が15歳の頃(昭和18年)に戦局は次第に激しくなりました。兵庫県宝塚市に住んでいた手塚は、次第に厳しくなる軍事教練や勤労奉仕に従事する一方で、生命の危機にさらされているがゆえに「漫画」への思いは募っていきました。軍需工場の寮や、トロッコの横で、手塚治虫は隠れながら漫画を描き続けました。 昭和20年8月15日、戦争が終わりました。当時、兵庫県宝塚に住んでいた手塚治虫は、8月15日の夜、電車に乗って大阪に出た時、「おお、大阪の街に灯がついている!」と、その明かりを見て、はじめて平和になったという実感がこみ上げてきたといいます。 本コーナーでは、手塚治虫が体験した「戦争」をリアルに感じることができるよう、当時の手塚の写真と本人の手記、当時の様子を描いた漫画、当時の実物資料や写真などで構成します。
戦中・戦後の体験を通して、手塚治虫には「二度と戦争を起こしたくない」という強い思いが残りました。終戦後、手塚治虫は医者の道を捨て、夢に見たマンガ家の道を歩み始めることとなります。 漫画家となった手塚治虫は、自らの作品の中に直接的、間接的に「戦争」を様々な形で描くようになりました。自分自身を主人公に、戦争中の体験を描いたもの。戦争そのものをテーマで描いたもの。そして、戦争に対するメッセージの織り込んで描いたもの。 手塚治虫の漫画の原点には、手塚治虫の「戦争体験」が存在しています。そして、手塚治虫は「二度と戦争をおこさない為」に戦争を語り、メッセージを送り続けていきます。 本コーナーでは、手塚治虫が「戦争」について描いた直筆原稿を、様々な視点による分類を行い展示いたします。これらを通じて、手塚治虫の思いを感じていただきたいと思います。
「紙の砦」 | 「どついたれ」 | 「鉄腕アトム」 |
「カノン」 | 「W3」 | 「低俗天使」 |
「どろろ」 | 「火の鳥 未来編」 | 「アドルフに告ぐ」 |
「来るべき世界」 | 「ブラックジャック」 |
期日:平成19年5月3・4・5日(木・金・土) 10:00~15:00
親子で遊ぼう、昔の遊び
メンコ、けん玉、お手玉、おはじき、かたぬき など
○昔懐かしい「あめ細工」実演
限定数で、子どもたちに無料配付!
○梅田佳声さんによる紙芝居上演
時間:11:00~、13:00~
○「鉄腕アトムがやってくる!」(握手会・撮影会)
時間:10:00~、12:00~、14:00~
○昭和館クイズラリー
特別企画展特製クリアファイルをプレゼント!
終了しました
日時 | 平成19年3月21日(水)14:00~16:00 |
タイトル | 「手塚治虫と戦争体験」 |
講師 | 石子順(評論家・日本漫画家協会参与) |
会場 | 九段会館 孔雀の間(約70名) |
【講師プロフィール】
漫画評論家、映画評論家。昭和10年京都市生まれ。昭和28年中国から帰国。東洋大学文学部卒。中国瑛映画の字幕翻訳を経て、映画評論活動を始める。昭和42年に手塚治虫と出会い、漫画研究を始め、以後手塚氏と交流。前和光大学表現学部教授。著書に『手塚治虫 未来からの使者』(童心社)など。ちばてつや、森田泰次たちとの共著『中国からの引揚げ 少年たちの記憶』で第6回文化メディア芸術祭特別賞受賞。
(完売しました)
頒布方法 | 1200円(税込) 昭和館1階ロビーにて販売 送料負担で郵送販売も可(電話でお問い合わせ下さい) |
仕様 | A4版 80頁(カラー44頁) |
目次 | 第一部 手塚治虫の戦争体験 戦時中の学校生活/勤労動員/空襲への備え/本土初空襲と大阪市の空襲/私製本の発行/動物同好会と六陵昆虫研究会/昭和20年8月15日/占領下の日本/戦後の食糧事情/ 買い出し/闇市/戦災孤児/手塚治虫漫画家デビュー/赤本漫画 戦争が激しくなる前 誕生/宝塚へ/小学校へ入学/最初の漫画/オサムシというペンネーム/北野中学校時代 第二部 手塚治虫の描いた戦争 火の鳥 未来編/紙の砦/低俗天使/鉄腕アトム/ブラック・ジャック/ワンダー・スリー/どついたれ/アドルフに告ぐ/来るべき世界/どろろ/カノン 「手塚治虫の戦争体験その漫画」 石子順/手塚治虫年譜/「語り部になりたい」手塚治虫/出品目録 |
「手塚治虫の戦争体験その漫画」 石子順
手塚治虫は漫画家生活40年の記念誌で、これまでさまざまな漫画を描いてきたが、「一貫して僕が自分の漫画の中で描こうとしているものは、次の大きな主張です。”生命を大事にしようー”この主張は、「自然の保護」「生きものへの賛歌」「科学文明への疑い」「戦争反対」などのテーマにかえて、どの作品にも訴えたつもりです」と書いた。ここに手塚治虫の思想があふれている。
2004年8月に『手塚治虫ぼくの描いた戦争』(KKベストセラーズ)という「カノン」「ゼフィルス」「紙の砦」から「どろろ」一部まで11作品をまとめた手塚治虫のはじめての戦争漫画集が出た。2006年11月には「ブラック・ジャック 戦争の傷痕集」(秋田書店)が、B・Jが戦争にかかわった作品「魔王大尉」など11作品を集大成した。そして3月、「手塚治虫の漫画の原点、戦争体験と描かれた戦争」展が開かれる。手塚治虫の没後その作品展、アトム展とかロボット展とかいった未来指向や、その軌跡をたどる展覧会がいくつも開かれてきた。しかし、手塚治虫の戦争と平和の作品に焦点を当てた企画展ははじめてである。
今春、劇映画「どろろ」が公開されて大ヒットした。時代がようやく手塚治虫に追いついたという感を強くしたが、この展覧会はまたあらたに手塚治虫の漫画出発展ということになるだろう。